女性の骨盤臓器脱|初期症状チェックと気づき方―福岡薬院ひ尿器科コラム

「最近、膣の入口に“何か触れる”感じがする」「長く立っていると重い」——これらは骨盤臓器脱の初期サインかもしれません。骨盤臓器脱は出産経験のある40〜60代に増える“身近な不快症状”ですが、早期に気づけば日常生活の工夫や骨盤底筋トレーニングで進行を抑えられます。女性泌尿器科医として、初期症状のチェック方法、受診の目安までわかりやすく解説します。

1.骨盤臓器脱について、その基本を説明

⑴骨盤臓器脱とは?

骨盤臓器脱とは、骨盤底筋群の緩みなどにより膀胱・子宮・直腸といった臓器が下垂し、膣の方向にせり出す状態を指します。代表的なものに膀胱瘤・子宮脱・直腸瘤があり、複数が同時に起こることもあります。命に関わる危険は低いものの、下垂感や違和感、排尿・排便のトラブル、性生活での不快感などが生じ、生活の質を損なうことがあります。早期に気づき対策することで進行を遅らせ、手術を避けられる可能性もあります。

⑵起こりやすい年代・要因

発症は更年期以降に増加し、特に出産歴のある40〜60代に多くみられます。経腟分娩、吸引や鉗子分娩、巨大児の出産、分娩回数の多さがリスクを高めます。さらに、先天的な結合組織の弱さや肥満、慢性便秘・咳、重労働、長時間の立ち仕事など生活習慣も影響します。加えて閉経に伴うエストロゲンの低下により支持組織が弱くなることで、発症しやすく進行も徐々に進むのが特徴です。

2.初期症状のサインチェック

骨盤臓器脱は、ある日突然重症化するというより、少しずつ進行する病気です。初期には「ちょっと変だな」という違和感から始まります。例えば、長時間立ち仕事をしている50代の女性は「夕方になると膣の奥が下に引っ張られるようで、下着に何かが当たる感覚がある」と訴えます。別の方は「買い物帰りに歩いていて、膣の入口に小さなふくらみを触れた」と気づき、受診に至りました。

また「トイレで尿が出にくく、残っている感じがする」「くしゃみをすると以前より尿漏れが増えた」といった排尿トラブルもよくあるサインです。40代の主婦の方は「夜になると何度もトイレに行くのに、すっきり出ない」と話されました。さらに、入浴時に柔らかい膨らみに触れる、性交時に空気が入り音がして違和感があるといった訴えもあります。直腸側が関与すると、「便が出にくく、膣を押すとスッと出る」と語る方も少なくありません。

ただし、これらは骨盤臓器脱だけでなく過活動膀胱、軽度の尿失禁、慢性便秘などでも見られます。繰り返すようなら自己判断せず、医師に相談することが大切です。

*チェックリスト

☑膣の入口に「当たる」「ふくらみ」を感じる

☑夕方や立ち仕事後に骨盤が重だるい

☑尿が近い・出にくい・残尿感がある

☑咳やくしゃみで尿漏れが増えた

☑入浴時に柔らかい膨らみを触れる

☑性交時に空気が入る・痛みや違和感がある

☑便が出にくく、膣を押すと出やすい

当てはまる項目があれば、骨盤臓器脱の初期サインかもしれません。早めに泌尿器科で確認しましょう。

3.よくある勘違いと放置リスク

骨盤臓器脱について「太っただけ」「更年期だから仕方ない」と思われる方が少なくありません。しかしこの病気は進行すると膣からの下垂が強まり、歩行や外出など日常生活に制限が出てくるだけではなく排尿状態が悪くなり腎臓が腫れてしまうこともあります。

もうひとつの誤解は「必ず手術になる」というもの。実際には初期〜軽症の段階であれば、骨盤底筋トレーニングやペッサリー(リング)療法、いきむ動作を控え重いものをもたないようにするなどの生活習慣の見直しでコントロールできることが多いのです。

一方で、何もせずに放置すると、膣粘膜の擦れによるびらんや出血、尿路感染の繰り返し、重度の排尿障害や便秘の悪化につながります。その結果、活動量が減り体力低下を招く悪循環に陥る可能性もあります。気になる症状がある方は、早めの相談が安心です。

4.最後に

骨盤臓器脱は「年齢のせい」「仕方ない」と思われがちですが、実際には早めの気づきと対策でコントロールできる病気です。膣のふくらみや夕方の重だるさ、トイレでの残尿感や便が出にくいといった変化は、初期のサインである可能性があります。 思い当たる症状があれば、恥ずかしさよりも今後の快適な生活を優先していただきたいと思います。

薬院ひ尿器科には女性専用外来があり、プライバシーに配慮した環境で安心してご相談いただけます。保存的治療から手術まで幅広い選択肢の中から、症状や生活に合わせた“最小十分”の治療法をご提案します。違和感を放置せず、まずはお気軽に受診してみてください。女性医師として、同じ立場から一緒に解決策を考えてまいります。