骨盤臓器脱かも…何科を受診すべきか医師が解説―福岡薬院ひ尿器科コラム
鏡をのぞいたとき、下着の中で「何かが少し出ている気がする」。
排尿のあともスッキリしない。長時間立っていると、下腹部が重く感じる。
そんな違和感があっても、恥ずかしくて誰かに相談できない。――それは、骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)という病気のサインかもしれません。
実際にこの症状を感じた女性の多くがまず戸惑うのが、「何科に行けばいいの?」という点です。
この記事では泌尿器科の女医として、症状の仕組みや受診すべき診療科、治療の流れをわかりやすく解説します。
1. 骨盤臓器脱とは?女性の誰にでも起こりうる症状
骨盤臓器脱とは、骨盤の中にある臓器――膀胱・子宮・直腸などが支えを失い、腟の中や外に下がってくる状態を指します。
本来、骨盤底筋という筋肉や靭帯が、これらの臓器を下からしっかり支えていますが、出産・加齢・肥満・便秘などで少しずつ緩み、その結果臓器が落ちてくるのです。
決して珍しい症状ではありません。
出産経験のある女性の約半数が軽度の骨盤臓器脱を持つといわれています。
特に40代以降になると、「下腹部が重い」「何かが出てくるような感覚がある」「トイレがスッキリしない」といった違和感を感じる人が増えていきます。
ただし、痛みもなく、初期のうちは病気とは気づきにくいのが特徴です。そのため、「加齢のせいかな」と放置してしまう方がとても多いのです。
2. 骨盤臓器脱を疑ったら何科に行くべき?
最も多いのが、「婦人科? それとも泌尿器科?」という迷いです。
骨盤臓器脱は体の構造上、どちらの科でも扱う病気です。しかし、症状や治療内容によって受診先が異なります。
⑴婦人科に向いているケース
- 子宮脱や子宮下垂と診断されたことがある
- 出産後、腟の中に膨らみを感じる
- 女性ホルモンの乱れ(更年期症状)を同時に相談したい
婦人科では、子宮や卵巣など生殖器系に重点を置いた診察を行います。子宮が下がるタイプの臓器脱には、婦人科での診察が中心となります。
⑵泌尿器科に向いているケース
- 排尿しづらい・頻尿・尿もれがある
- 残尿感や膀胱の重さを感じる
- 骨盤臓器脱だけでなく尿失禁の症状もある
膀胱や尿道が下がるタイプ(膀胱瘤・尿道瘤)は、泌尿器科が専門です。
特に、女性の泌尿器疾患を専門に扱う「女性泌尿器科」を掲げるクリニックなら、婦人科と連携しながら総合的に治療できます。
つまり、症状が「膀胱」や「排尿」に関係する場合は泌尿器科、「子宮」や「腟の違和感」が強ければ婦人科。
どちらかわからない場合は、まずどちらでも構いませんので、いったん受診してみることをおすすめします。
3. 骨盤臓器脱の主な治療法
「手術しかないのでは?」と不安を感じる方も多いですが、必ずしもそうではありません。症状の軽さや生活への影響度によって、治療法は大きく分けて3段階あります。
① 保存的治療(軽度の場合)
- 骨盤底筋トレーニング
自宅でできる最も基本的な治療法です。腟や肛門を締める筋肉を意識的に鍛えることで、臓器を支える力を回復させます。
②リングペッサリー療法
腟の中に柔らかいリング状の器具を入れ、下がった臓器を下から支える方法。挿入・洗浄は医師が行い、痛みはほとんどありません。
③ 手術療法(中等度以上・生活に支障がある場合)
メッシュを使用した腹腔鏡手術やTVM手術のほか、異物を使用せずに自分の組織を使って臓器を引き上げる腟壁形成術などの術式があります。
入院は4〜7日程度で、ほとんどの方が快方に向かいます。
私が担当した患者さんでも、「手術後は違和感がなくなり、生活が楽になった」と笑顔で話される方が多いです。
4. 放置するとどうなる?気をつけたい症状
骨盤臓器脱は「痛くないから」と放置されがちですが、進行すると次のような困りごとにつながります。
- 歩行中の不快感・下腹部の張り
- 排尿困難、残尿感、尿もれ
- 排便しづらさや便秘
- 感染のリスク上昇
- 性交時の違和感や痛み
重度の場合、膣の外に臓器が出てしまうこともあります。日常生活の支障だけでなく、炎症や潰瘍を引き起こすこともあるため、早期の相談が大切です。
5. 女性医師の視点から伝えたいこと
多くの女性が「恥ずかしいから」「相談しにくいから」と悩みを抱え、数か月症状を抱えた状態で来院されます。「骨盤臓器脱は年齢のせいでも恥ずかしいことでもない」とうことを改めてお伝えしたいです。
治療を受けた患者様からは、「もっと早く相談すればよかった」「普通に生活できるだけで幸せ」という声を何度もいただきます。
骨盤臓器脱を疑ったとき、受診すべきは 婦人科または泌尿器科。
どちらを選んでも構いませんが、尿もれや排尿トラブルを伴う場合は当院のような、女性専用外来、又は女性医師がいる病院がおすすめです。
泌尿器科の女医として、そして一人の女性として――。あなたの体と心にやさしい選択を応援しています。

