泌尿器科の女医がやさしく解説:TOT手術で笑っても安心―福岡薬院ひ尿器科コラム
「友人とのおしゃべりで大笑いした瞬間」「くしゃみをした拍子に」「重い荷物を持ち上げた時」…ふとした瞬間に「あっ」と尿が漏れてしまう経験、ありませんか?
誰にも相談できず、ひとりで悩んでいる方は少なくありません。「また漏れたらどうしよう」と、外出や人と会うことさえ億劫になってしまう。そんなつらい思いをされているかもしれませんね。
その症状は「腹圧性尿失失禁」といい、女性によく見られるものです。そして、それは決して恥ずかしいことでも、仕方のないことでもありません。
今日は、そんな腹圧性尿失禁の悩みを解消するための、体への負担が少ない効果的な治療法「TOT手術」について、皆さんの不安が少しでも和らぐように、やさしく解説していきます。
1.そもそも「腹圧性尿失禁」ってどうして起こるの?
まず、なぜ尿漏れが起きてしまうのか、簡単にお話しします。
私たちの骨盤の底には、「骨盤底筋(こつばんていきん)」というハンモックのような筋肉があり、膀胱や尿道を支えています。この筋肉がしっかり働いていると、お腹に力が入っても尿道をキュッと締めて、尿が漏れるのを防いでくれます。
しかし、妊娠・出産や加齢、体重の増加などが原因でこの骨盤底筋が緩んだり、尿道を支える組織が弱くなったりすると、咳やくしゃみなどでお腹にグッと力(腹圧)がかかった時に尿道を支えきれず、尿が漏れてしまうのです。これが腹圧性尿失禁のメカニズムです。
体操で改善することもありますが、「色々試したけれど、なかなか良くならない…」という方も多くいらっしゃいます。
2.「TOT手術」は、どんな手術?
そこで選択肢となるのが「TOT手術」です。
TOT手術は「Trans-Obturator Tape(経閉鎖孔テープ)手術」の略称で、腹圧性尿失禁に対する標準術式として広く行われています。
咳やくしゃみをした時などに思わず尿が漏れてしまうのは、尿道を支えているハンモックのような組織が緩んでしまうことが原因です。この手術は、その緩んだハンモックを補強し、尿道をしっかりと支えてあげることを目的としています。
具体的には、腟の壁を1.5cmほどと左右の足の付け根あたりに1㎝ほど切開し、そこから医療用の特殊なテープ(生体適合性に優れたポリプロピレン製のメッシュテープ)を尿道の裏側に通します。このテープは、骨盤にある頑丈な骨の穴を支点にするので、安定感があります。
この手技の最大のポイントは、テープを「ゆるやか」に余裕をもたせて設置することです。お腹に力が入った腹圧上昇時に起こる尿道が下がりすぎるのを、このテープが新たな支持基盤となって防ぎます。咳やくしゃみで腹圧がかかると、尿道がこのテープに押し付けられ、圧迫されることできゅっと閉まり、尿の漏れを防ぐという、極めて合理的なメカニズムに基づいています。これにより、尿漏れに効果が高い上に安全な手術として広く選択されている治療方法です。
3.TOT手術の「3つの安心ポイント」
「手術」と聞くと、体にメスを入れるのが怖い、入院が長くなるのでは、と心配になりますよね。でも、ご安心ください。TOT手術は、患者様の負担をできるだけ少なくする工夫がされた手術なのです。
ポイント1:傷が小さく、短時間で終わる
手術は、腟の中からと、足の付け根(Vラインのあたり)に1cmほどの小さな切開を2ヶ所作るだけ。お腹を切ることはありませんので、傷跡はほとんど目立ちません。手術時間も、麻酔の時間を除けば30分程度と非常に短時間です。
ポイント2:入院期間が短く、社会復帰も早い
体への負担が少ないため、短期間の入院で済むことがほとんどです。退院したその日から、シャワーを浴びたり、デスクワークや家事など、体に負担のかからない日常生活に戻ることができます。
ポイント3:高い治療効果が期待できる
TOT手術は非常に効果の高い治療法として知られており、手術を受けられた方の9割以上で尿漏れの改善が見られると報告されています。多くの方が「もっと早く手術を受ければよかった!」とおっしゃいますよ。
4.手術後の生活で気をつけることは?
退院後、約1ヶ月間は、重いものを持ったり、激しい運動をしたり、自転車に乗ったりすることは控えていただきます。これは、体の中に入れたテープがしっかりと組織に馴染むための大切な期間です。湯船に浸かるのも、感染予防のために1ヶ月ほどはお休みしましょう。
少し不便に感じるかもしれませんが、この期間を過ぎれば、旅行やスポーツなど、これまで尿漏れが気になって諦めていたことにも、安心してチャレンジできるようになります。
5.ひとりで悩まず、まずは専門医にご相談を
尿漏れの悩みは、生活の質(QOL)に大きく関わります。笑いたい時に思いきり笑えない、好きなことを楽しめない、そんな毎日はとてもつらいですよね。
「歳のせいだから…」と諦める必要はまったくありません。
TOT手術は、あなたの自信と笑顔を取り戻すための、とても有効な選択肢の一つです。
「私の症状でも対象になるのかな?」「もう少し詳しく話を聞きたい」と思ったら、ぜひ一度、当院、薬院ひ尿器科の女性専用外来をおたずねください。当院では泌尿器科としてはめずらしい、女性医師による、女性専用外来を開設しています。ピンクと白を基調にした診察室、完全予約制で待合室でも他の患者様と会うことが少なく安心と多くの女性の患者様からお声をいただいています。何より、泌尿器科へ受診のハードルが下がり、受診してよかったという患者様が少しずつ増えてきたことが診察している医師として、嬉しく思っています。
私たち専門医が、あなたの悩みにしっかりと耳を傾け、あなたに合った一番良い方法を一緒に見つけていきます。もうひとりで悩まないでくださいね。
あなたの毎日が、再び晴れやかなものになるよう、心から応援しています。

