「歳のせい」と諦めないで。80代の骨盤臓器脱は治せます―福岡薬院ひ尿器科コラム

「もう80代だから、手術なんてとても無理」「この歳だから、股に何かが下がってくる不快感も仕方ない」。そうご自身に言い聞かせ、長年の悩みを抱え続けていませんか。泌尿器科の女性医師として、私は日々多くの80代、90代の患者さまが、適切な治療によってこうした悩みから解放され、笑顔で「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃる姿を目の当たりにしています。骨盤臓器脱は、年齢を重ねるほど症状が進みやすい病気ですが、決して「歳のせい」と諦めて我慢し続ける必要はありません。外出が億劫になる、トイレが近くて困る、趣味を楽しめない。そんな毎日から抜け出し、これからの人生をもっと快適に、自分らしく過ごすことは十分に可能です。この記事では、80代のあなたでも安心して受けられる骨盤臓器脱の治療法について、専門家の視点から詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

1. 80代の骨盤臓器脱、なぜ起こり、放置はなぜ危険か

骨盤臓器脱とは、出産や加齢によって骨盤の底で内臓を支えているハンモック状の筋肉「骨盤底筋」が緩み、その上にある膀胱や子宮、直腸といった臓器が膣から下がってきてしまう病気です。特に80代になると、長年の負担の蓄積に加え、女性ホルモンの減少によって筋肉や組織の弾力が失われるため、症状が顕著になりやすいのです。「膣からピンポン玉のようなものが出てくる」「歩くと股が擦れて痛い、出血する」「尿が出にくい、あるいは漏れてしまう」。これらの症状は、生活の質(QOL)を著しく低下させます。放置すると、尿が出せなくなり腎臓の機能に悪影響を及ぼしたり(腎後性腎不全)、腎臓が炎症をおこしてしまう(腎盂腎炎)危険性さえあります。これは、我慢すべき「老化現象」ではなく、治療によって改善できる「病気」なのです。

2. 年齢や体力に合わせた多様な治療の選択肢

「手術は怖い」「体力的に自信がない」と思われるかもしれません。ご安心ください。骨盤臓器脱の治療は、手術だけではありません。お一人おひとりの体の状態、ライフスタイル、そしてご希望に合わせて、さまざまな選択肢があります。

*  手術をしない保存的治療(ペッサリー療法)

 手術を希望されない方や、他の持病で手術が難しい方には、「ペッサリー」という医療用のリングを膣内に入れて、下がってきた臓器を物理的に支える方法があります。体への負担が少なく、外来で装着できるのが利点です。しかし、この方法には高齢者特有の注意点があります。ペッサリーは3〜4ヶ月ごとの定期的な交換・洗浄が必要で、通院が負担になることがあります。また、女性ホルモンの減少で膣の粘膜が薄く乾燥しているため、ペッサリーが擦れて出血や感染を起こしやすかったり、違和感が強かったり、逆に骨盤底筋の緩みから抜け落ちやすかったりするデメリットもあります。根本的な治療法ではないため、長期的に見ると時間的・経済的な負担が大きくなる可能性も考慮する必要があります。

* 体への負担が少ない手術療法

 近年の医療技術の進歩は目覚ましく、高齢の方でも安全に受けられる体への負担が少ない手術が主流になっています。

   ・腟壁縫縮術:腟の粘膜を剥離し筋層を縫いあわせて腟壁を補強し、落ちてきた膀胱や子宮、直腸をもとの位置にもどす方法です。異物を使うこともなく、重篤な合併症もありません。

    ・腟閉鎖術: 今後、性交渉の予定がない方で、より体への負担を減らしたい場合に適した手術です。膣の壁を縫い合わせて物理的に臓器の脱出を防ぎます。手術時間が短く、出血も少ないため、多くの持病をお持ちの方や特にご高齢の方に選ばれています。

    ・メッシュを用いる手術(TVM手術など): 弱った骨盤底を医療用のメッシュで補強し、ハンモックのように臓器を支える方法です。再発率が低く、80歳以上の方でも安全に受けられることが報告されていますが、異物であるメッシュによるトラブルの可能性もあります。

    ・腹腔鏡・ロボット支援下手術(LSC/RASC): お腹に小さな穴を開けて行う、さらに精密で安全な手術です。2020年からはロボット支援手術も保険適用となり、より多くの方がこの先進医療を受けられるようになりました。

どの治療法が最適かは、患者さまの状態と希望によって異なります。専門医としっかり相談し、ご自身が納得できる方法を選ぶことが大切です。

3. 治療で生活を取り戻した患者さまの声

実際に、87歳で骨盤臓器脱の手術を受け、その後91歳まで元気に旅行や趣味を楽しまれた方がいらっしゃいます。長年、重いものを持つ仕事をされ、常に股の間の不快感に悩まされていましたが、「もう歳だから」と諦めていたそうです。しかし、ご家族の勧めで手術を決意。術後は長年の悩みから解放され、「もっと早く手術すればよかった」と、最期まで生き生きとした毎日を送られました。このように、80代、90代でも治療によって生活の質を劇的に改善させることは十分に可能なのです。

4. 諦める前に、女性医師にご相談ください

「もう歳だから」という一言で、これからの人生を不快な症状と共に過ごす必要は全くありません。旅行に行きたい、お孫さんと気兼ねなく遊びたい、趣味の集まりに参加したい。そんな当たり前の願いを叶えるために、私たち医療者はいます。

当院、薬院泌尿器では、そうした女性特有の悩みに寄り添うため、女性医師による「女性泌尿器科専門外来」を完全予約制で開設しております。診察から検査、治療方針のご相談、そして実際の治療に至るまで、すべて女性医師と女性スタッフが責任を持って対応いたします。デリケートな悩みだからこそ、同じ女性として共感し、安心して何でもお話しいただける環境づくりを何よりも大切にしています

治療法も、ご紹介したペッサリーや手術だけでなく、緩んだ膣の組織を改善させる「インティマレーザー」といった最新の選択肢もご用意しております。当院は福岡市の中心部にあり、公共交通機関でのアクセスも非常に便利です。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。これからの人生を、もっと快適に、もっとあなたらしく輝かせるための第一歩を、私たちと一緒に踏み出しましょう。