尿もれ手術、TVTとTOTどっちが良い?違いを解説―福岡薬院ひ尿器科コラム

くしゃみや咳をした瞬間、スポーツを楽しんでいる時、ふとした拍子に起こる尿もれ。そのヒヤッとする感覚は、日々の生活から少しずつ自信を奪っていきます。尿もれパッドで対策はできるけれど、根本的な解決にはならない。そんなもどかしい思いを抱え、手術という選択肢を考える方も近年増えてきました。

この記事では、尿もれ(腹圧性尿失禁)の標準的な手術である「TVT手術」と「TOT手術」について不安や疑問に寄り添い、二つの手術の違いを分かりやすく解説します。この記事を読めば、あなたが前向きに治療法を選択するための、確かな知識が身につくはずです。もう一人で悩まずに、快適な毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。

1.あなたに合った術式を医師と選ぶのが最善

TVT手術とTOT手術のどちらが良いかという問いへの最も大切な答えは、「患者様一人ひとりの状態によって最適な術式は異なる」ということです。どちらか一方が絶対的に優れているわけではありません。あなたの尿もれの重症度、体の状態、過去の手術歴などを総合的に判断し、経験豊富な医師と相談して決めることが、最良の結果につながります。

どちらの手術も、ポリプロピレン製のメッシュテープを尿道の下に通して支える、という基本原理は同じです。尿道を支えることで、お腹に力が入った時の尿もれを防ぎます。改善率は90%程度と非常に高く、多くの女性が長年の悩みから解放されています。

手術時間も30分程度と短く、体への負担が少ないのが特徴です。しかし、テープを通す場所やそれに伴うメリット・デメリットには違いがあります。それぞれの特徴を正しく理解し、医師の説明に納得した上で、自分に合った手術法を選択することが後悔のない治療への鍵です。

2.何が違う?:テープを通す場所と合併症が違う

TVT手術とTOT手術の最も大きな違いは、「メッシュテープを体のどこに通すか」という点にあります。この違いが、それぞれのメリットとデメリット、そして起こりうる合併症の種類に関係してくるのです。

*TVT手術(Tension-free Vaginal Tape)

1993年に開発された、腹圧性尿失禁手術の標準的な術式です。腟から挿入したテープを、膀胱の両脇にある恥骨の裏側を通して下腹部の皮膚(2か所)へ抜きます。これにより、尿道をU字型に吊り上げるように支えます。

長期的な治療成績が安定しており、治癒率は90%以上と非常に高い効果が報告されています。特に重症例や再発例に対しても高い効果が期待できます。

ただし、テープを体内の見えない部分に通すため、まれに膀胱や腸、血管を傷つけるといった重篤な合併症のリスクがあります。

*TOT手術(Trans-Obturator Tape)

TVT手術の合併症リスクを軽減するために2001年に開発された術式です。TVT手術と同様に腟からテープを挿入しますが、テープの出口が異なります。左右の太ももの付け根にある「閉鎖孔」という穴を通して皮膚へ抜きます。これにより、尿道をより水平に近いハンモック状に支えるイメージになります。

テープが膀胱や主要な血管・臓器から離れた位置を通るため、TVT手術で懸念される重篤な合併症のリスクが非常に低く、より安全性が高いとされています。

まれにテープが閉鎖神経を刺激し、術後に太ももの付け根に痛みやしびれが出ることがあります。また、重症例に対する効果はTVT手術に若干劣るとも言われています。

どちらの手術が適しているかは、尿失禁の重症度、過去の手術歴、合併症のリスクなどを総合的に評価して判断されます。一般的にTOT手術が第一選択となることが多いですが、重症例などではTVT手術が選ばれることもあります。手術時間はどちらも30分程度と短く、体への負担が少ないのが特徴です。

3.TVTとTOTのメリット・デメリット

それでは、二つの手術法のメリットとデメリットを具体的に比較してみましょう。どちらを選ぶべきかを考える上で、重要な判断材料になります。

 TVT手術TOT手術
メリット歴史が長く、長期成績が安定している。重症の尿失禁にも高い効果が期待できる。膀胱や腸などを損傷する重篤な合併症のリスクが極めて低い。骨盤内の手術歴がある人にも安全に行いやすい。
デメリットごく稀に膀胱や腸、大血管を損傷するリスクがある。術後に尿が出にくくなる「排尿困難」の頻度がTOTよりやや高い傾向がある。術後に太ももの付け根や股関節に痛みや違和感が出ることがある。重症例ではTVT手術に比べて効果がやや低い場合がある。  

このように、安全性ではTOT手術に分がありますが、治療効果の高さではTVT手術が有利な場面もあります。例えば、非常に重い尿もれに悩んでいる方には、よりしっかりと尿道を支えられるTVT手術が選択されることがあります。一方で、過去に骨盤内の手術を受けたことがある方などには、安全性を最優先してTOT手術が選ばれることが多いです。

最近では、両者の長期的な治療効果や合併症の発生率に大きな差はないという報告もあります。だからこそ、術者の経験と、患者個々の状態に合わせた丁寧な術式の選択が、より一層重要になっているのです。

4.勇気を出して専門医に相談しましょう

TVT手術とTOT手術、それぞれの違いが少しお分かりいただけたでしょうか。どちらの手術も、長年あなたを苦しめてきた尿もれの悩みから解放してくれる、非常に有効な治療法です。手術と聞くと怖く感じるかもしれませんが、実際は短時間で終わり、入院期間も数日程度と、体への負担は決して大きくありません。

尿もれを気にせず、思いきり笑いたい。好きなスポーツを心から楽しみたい。旅行先でトイレの心配をしたくない。そんな当たり前の日常を取り戻すための選択肢が、すぐそこにあります。この記事が、あなたのその一歩を後押しできたなら、これほど嬉しいことはありません。