「年のせい」と諦めないで。女性特有の泌尿器科の病気―福岡薬院ひ尿器科コラム
咳やくしゃみでヒヤッとする。トイレが近くて外出が億劫になる。夜中に何度も目が覚めてしまう。そんな尿にまつわる不快な症状を、「もう年だから仕方ない」と自分に言い聞かせて、諦めていませんか。
その我慢は、あなたの快適な毎日を少しづつ奪っていきます。趣味や旅行、友人との楽しいおしゃべり。そんな当たり前の日常に、いつも付きまとう尿の悩み。それは、決して年齢のせいだけで片付けてよい問題ではありません。
実は、それらの症状の多くは治療が可能な「病気」です。適切な知識を持ち、専門家へ相談する勇気さえあれば、あなたはもっと快適で自由な毎日を取り戻すことができます。この記事では、多くの女性が抱える泌尿器科の病気について、その原因と解決策を優しく解説します。
もう一人で悩まないでください。あなたの体が出しているサインに、今こそ耳を傾けてみましょう。
1.その不調は治療できる「病気」です
頻尿や尿漏れといった症状は、加齢による自然な変化だと考えがちです。しかし、これらは「過活動膀胱」や「腹圧性尿失禁」といった、明確な名前を持つ病気である場合がほとんどです。そして、病気である以上、適切な治療法が存在します。
「年のせい」という言葉で諦めてしまうことは、治療の機会を自ら手放しているのと同じです。放置すれば症状が悪化し、生活の質が著しく低下することもあります。例えば、尿漏れを気にするあまり水分摂取を控え、脱水や便秘、膀胱炎を引き起こすケースも少なくありません。
大切なのは、それが治療によって改善できるという事実を知ることです。現在の泌尿器科医療は大きく進歩しています。生活習慣の改善指導や骨盤底筋トレーニング、効果的な内服薬、さらには体への負担が少ない手術など、選択肢は多岐にわたります。
あなたの悩みは、決して特別なものでも、恥ずかしいものでもありません。まずはその不調が病気であることを認識し、専門医に相談するという第一歩を踏み出すことが、解決への最も重要な鍵となります。
2.女性ホルモンと骨盤底筋
なぜ女性は、男性に比べて尿のトラブルを抱えやすいのでしょうか。その背景には、女性特有の体の仕組みとライフイベントが深く関わっています。大きな要因は「女性ホルモンの変化」と「骨盤底筋のゆるみ」の二つです。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、膀胱や尿道の粘膜を健康に保ち、尿道を締める働きを助ける作用があります。しかし、更年期を迎えてエストロゲンが減少すると、膀胱が過敏になったり、尿道の締まりが悪くなったりして、頻尿や尿意切迫感、尿漏れが起こりやすくなります。
もう一つの要因である骨盤底筋は、骨盤の底でハンモックのように膀胱や子宮を支えている筋肉群です。この筋肉が妊娠や出産によって伸びたり傷ついたりすると、うまく機能しなくなります。その結果、咳などの腹圧がかかった際に尿道を締めきれず、尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁」の原因となるのです。
これらの体の変化は、女性であれば誰にでも起こりうることです。決してあなたのせいではありません。体の仕組みを正しく理解することが、不安を和らげ、前向きに治療に取り組む力になります。
3.知っておきたい女性の泌尿器科疾患
ここでは、多くの女性が経験する代表的な泌尿器科の病気をいくつか紹介します。ご自身の症状と照らし合わせながら、確認してみてください。
*過活動膀胱(OAB)
急に耐えがたいほどの強い尿意を感じ(尿意切迫感)、トイレに何度も行くようになります。夜中に排尿のために起きることも多く、時には間に合わずに漏れてしまうこともあります。膀胱が過敏になり、少ししか尿が溜まっていなくても、脳に「排尿しなさい」という指令が過剰に出てしまう病気です。
*腹圧性尿失禁
咳、くしゃみ、笑う、重い物を持つ、走るといった、お腹に力が入った瞬間に尿が漏れてしまう状態です。出産や加齢による骨盤底筋のゆるみが主な原因です。命に関わる病気ではありませんが、生活の質を大きく損なう原因になります。
*骨盤臓器脱
骨盤底筋のゆるみにより、子宮や膀胱、直腸などが本来の位置から下がり、腟から外に出てきてしまう病気です。「股に何かが挟まっている感じがする」といった違和感で気づくことが多いです。排尿や排便のしづらさを伴うこともあります。
これらの病気は、単独で起こることもあれば、複数が同時に起こることもあります。気になる症状があれば、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。
4.専門医に相談して快適な毎日を
ここまで読んでくださったあなたは、ご自身の症状が「年のせい」ではないかもしれない、と感じ始めているのではないでしょうか。その気づきこそが、快適な毎日を取り戻すための、最も大きな一歩です。
泌尿器科の受診には、まだ少し抵抗があるかもしれません。しかし、専門医はあなたの悩みに真摯に耳を傾け、最適な治療法を一緒に探してくれる頼もしいパートナーです。特に女性医師がいるクリニックであれば、より安心して心の内を話せるでしょう。
治療を始めることで、トイレの場所を気にせず買い物や旅行を楽しめるようになります。友人との会話で、心から笑えるようになります。夜もぐっすり眠れ、すっきりとした朝を迎えられるようになります。そんな当たり前で、かけがえのない時間を取り戻すことができるのです。
ひとりで抱え込まず、どうか勇気を出して専門医、特に女性専用外来のある泌尿器科の扉を叩いてみてください。あなたの人生は、もっと自由で快適なものになるはずです。

